QBハウス

2016.11.05 岡田定晴
 ソワールへ続く道(作曲:Amacha)

 QBハウスをご存知でしょうか? 1080円で髪の毛をカットし、襟足やもみあげを整えてくれる理髪店、いわゆる散髪屋です。 髪の毛を洗ったり、髭を剃ったりのサービスはありません。 QBハウスが開業したのは、1996年(平成8年)11月のことだそうです。消費税が8%になるまでは1000円で、 現在は1080円でヘアカットのサービスが受けられます。私の世代は、子供の時から散髪する時は床屋さんに通っています。 ヘアカットと、顔剃り、シャンプーの後、ヘアドライヤーとヘアリキッドで仕上げをしてもらい、店によってはマッサージの サービスもあります。理容師さんと雑談を楽しんだり、顔剃りが気持ちが良くていつの間にか眠ってしまうこともありました。

 QBハウスを初めて利用したのは10数年前で、2000年を過ぎてからのことです。引越しをして、それまで通っていた理髪店に行くことが難しくなり、 それに代わる満足できる店が見つからなかったときでした。どんなことでも、経験のない新しいことを始めるのは、勇気が要るものです。 今でこそQBハウスは、国内517、海外108の店舗数を誇り、それなりの評価を得ていますが、当時はQBハウスに行くには多少の不安がありました。 理髪店の価格は今もそうですが、たいてい4~5千円です。それが、たった千円という料金で腕の方は大丈夫なのか? それまで理髪店でのんびりしてくつろいでいた豊かな気分が味わえず、疲れもとれないのではないか・・・不安や心配はいっぱいありました。 それに、誰かに見られて「あの人がQBハウスに行っていたよ」と、面白おかしく噂を広められはしないかということも気になりました。 かつてQBハウスは、私にとってそういう存在でした。



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 でも、私は利用して慣れるにつれて、きわめて合理的な手法で経営が成り立っていることが理解できました。客一人の支払いが5分の1になっても、 5分の1の時間しか使わなければ、そしてお客さんの数が確保できれば、売り上げは同じではないか。むしろ、水まわりの設備やシャンプーや 顔剃りに必要な道具やおしぼり、スペースの節約など、売り上げに必要なコストは、従来の床屋さんよりも抑制できるのではないか。 どの店に行っても、同じシステムユニットを前にして、同じ回転いすに座ります。システムユニットには櫛や紫外線消毒器や毛の屑を 掃除機のように吸い取るエアウォッシャーやクローゼットがコンパクトにまとめられています。同じ設備を大量に発注すれば、コストは大幅に 下がる筈です。利用する側にとっても、コストばかりではなく時間も節約でき、その分だけ時間が有効に活用できます。 スタイリストはヘアカットのみを数多くこなすので、ヘアカット技術は間違いなく向上するのではないか、と思うようになりました。

 ところで、最近のQBハウスは、ICT(情報通信技術)を活用して顧客が思い描くヘアスタイルをスタイリストに伝えたり、 現在地から店舗への距離や混雑状況を確認することを可能にしています。
「カットカルテ」というスマホのアプリで、
・前髪・サイド・トップ・後髪のカットの度合いを設定した”4つの移動式のツマミ”と、登録してあるカットモデルの”写真”を合わせて、スタイリストに要望を伝えることができます。
・来店予定日時の予想待ち人数(過去のデータをもとに推計)や、現時点での待ち人数を表示します。
・好みのヘアスタイルや最寄り駅、カットのタイミングなど個人の情報を登録すると、客が行きやすい場所の店やカットのタイミング通知などが行われます。
・カットの代金を自動販売機に支払ったときに出てくるチケットのバーコードを読み取ると、カット終了後しばらくしてアンケートに回答できるようになり、抽選に参加できるようになります。


 このアプリをダウンロードするときに、「キュービーネット株式会社」と書いてあったので、QBハウスも情報子会社を持ったのかと思いました。 しかし、調べてみると、QBハウスの会社名が「キュービーネット株式会社」とわかりました。創業者が、いつかインターネットの時代が来ると考えていたため 社名に”ネット”が付いているとのことです。
 また、以前からあったのですが、座席の前に通信社のニュースが表示され、外から見える場所には混雑状況の目安が分かる表示灯が設置されています。 緑なら「すぐできる」、黄なら「5 - 10分待ち」、赤は「15分以上待ち」で、この様子は公式サイトからスマホでも確認ができます。

 こうした状況は、散髪という情報通信技術とは関係なさそうな領域にも、ICT(情報通信技術)が深く浸透しつつあり、生活をより 便利なものにしていると感じさせるものです。更に、「カットカルテ」というアプリが外国語に対応するようになれば、言葉のわからない外国人旅行者も 安心して散髪ができるようになるでしょう。このようにQBハウスを見ていると、改めて、私たちの普段の暮らしが「インターネットの時代」を迎えていることを実感します。


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