展示会の「Webによる事前登録」の仕組み

2016.11.17 岡田定晴
 7月の水平線(作曲:Amacha)

 昔は、東京モーターショーやエレクトロニクスショー、情報機器展などの大規模な展示会は、晴海にあった東京国際見本市会場で、 開かれていました。浜松町でJRを降りて、竹芝桟橋から船で会場近くの桟橋に降り、帰りはパンフレットを いっぱい抱えてまた船に乗ったものです。1989年に幕張メッセが、1991年にパシフィコ横浜が、1996年に 東京ビッッグサイトが完成し、晴海の会場は閉場しました。

 こうした大規模な展示会のイベントに入場するためには、予め入手した招待券を持って受付に行くか、 入場券を買うために列を作って並ばなければならなりませんでした。日本だけではなく海外でも同じでした。 1992年にアメリカで開催された放送機器関連の展示会に行ったときには、 アンケートに記入して、ずいぶん待たされた挙句、その場で高い入場料(会員になれば割り引かれた金額になる)を支払う必要がありました。 お国柄なのかどんなに人を待たせようが、受付をしている人に行列を作って並ぶ人を気遣う様子はありませんでした。 私にとっては、外国での貴重な時間だったのですが、半日近くも無駄な時間を費やすことになってしまいました。



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 2000年に、アメリカで再び同じ放送機器関連の展示会に訪れたときは、全く違っていました。日本でその展示会のホームページから 予約をして、入場料の支払い手続きを事前に済ませませることができました。アメリカの会場での入場に必要な書類等は、郵送で送られてきました。 ですから、スムーズに展示会場に入場することができ、貴重な時間を無駄にすることもありませんでした。 この仕組みは大変便利なので、日本でもすぐに導入されるであろうと思っていました。

写真:パス  今では、こうした「Webによる事前登録」の仕組みは、日本でも当たり前になっています。入場手続きだけではなく、講演やセミナーの聴講予約ができます。 所属や氏名とともに、バーコードや聴講の予約をした講演やセミナーの一覧も一緒に印刷ができ、それを会場に持って行って、 会場に置いてあるアクリルの透明のホルダーに名刺と一緒に入れて首から下げれば、入場の準備は完了です。 受付で列を作って待ち、係員とやりとりすることもなく、直接、会場の入り口へ行ってバーコードを読み取ってもらうだけとなりました。

 2000年にアメリカで知ったその仕組みが日本で導入された時期は、私自身が転勤などで東京に居なかった期間があるので凡そのことしかわかりませんが、 早ければ私が転勤で東京を離れた2004年で、そして私が東京に戻って来た2007年には使っていましたので、 「Webによる事前登録」の仕組みが導入されたのは2004~2007年ということになります。アメリカに遅れたのは、1年や2年ではありません。 我々は、「情報を上手に管理する」こと、つまり「無駄をなくして効率を高めるために情報を有効活用する」という事に対する 「意識」や「センス」が貧弱なのではないかと感じます。

 アメリカの展示会主催者は、受付でいくら人を待たせても平気であるという状況を見て、「これではいけない、改善しなくては、ICT(情報通信技術)を 駆使して改善しよう」と考えた結果なのかもしれません。日本では、待っている人を待たせてはいけないという気持ちが働くので、 係員の対応の優秀さでなんとかアメリカほど問題にならなかったのかもしれません。 その日本人の勤勉さや心遣いが、情報システム化のニーズを弱めてしまうのか、あるいは単にシステム構築力、ソフト開発力の違いなのでしょうか。 私には、ソフトウェアエンジニアが最も人気の高い職種であるアメリカと、それがネガティブなイメージで語られることの多い日本との違いに思われてなりません。


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