ICT技術の今と昔 ~その4「1990年代から今」~

2017.03.28 岡田定晴
 セピア色の渚(作曲:Amacha)

 コンピュータは、1970年代も1980年代も、時間を費やす割にはアウトプットが少ない、成果が出ない、コストパフォーマンスが悪いものでした。 だから「コンピュータなど社会性のないオタクがやること」と、私の周囲の人々はそう思っていました。理解できないことに時間を費やして 何もアウトプットを出すことができない人は周囲から軽く見られていました。それは、効率性の求められる仕事を行う場では当然のことですが、 技術革新が急速に進んでいくことを敏感に感じて将来に向けて対応しようとする有能な人材を「オタク」という言葉で片づけてしまうものであり、 将来の成長の芽を摘んでしまうものでした。こうした感覚は、日本が高度経済成長を遂げ、バブルの好景気に沸いている時代には自然なものであったのかもしれません。 しかし、現在に至っても相変わらず同じような考え方をする人も多く、このことが、急速に進むインターネットの時代に、日本がICT(情報通信技術)で 遅れを取ってしまった原因の一つかもしれないと思うのです。 極薄液晶テレビ 20世紀に世界を制覇した日本の家電メーカーの「今」や、ICTの技術分野・応用分野における 日本企業の現状や、いつの間にかアメリカ製のソフトウェアを何の違和感もなく受け入れてしまう状況を見るにつけ、1990年代後半から2000年代前半には まだあった「何とかしなければ」という意欲すら失くしてしまったように感じられます。



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 1990年代初頭にインターネットの商用化が始まり、90年代半ばにWindows95でインターネットが爆発的に普及し、新しいインターネット企業が台頭し、 メール、eコマース、検索、ソーシャルメディアなどで、それ以前の常識が覆され、仕事の進め方やライフスタイルが変わり、新しい時代が築かれました。

 1995年、Windows95が発売された当時、私は周囲の勧めでDELLのデスクTOPを、40数万円で買いました。CRTディスプレイも立派なもので、奥行きが深いため、 それを置くだけで机の上が占有されてしまいました。その道に詳しい職場の先輩が自宅まで来て、インターネットに接続してくれました。 9600bpsのモデムをアナログ電話回線に接続し、ニフティを経由してインターネットにつながりました。

AudioとVideoをWebサイトに  インターネットに接続して暫く経ってから、RealAudioに、その後RealVideoなどに接してショックを受けました。 インターネットを通じて地球の裏側の音を聴いたり、映像を見たりできる大変な時代になってしまった・・・と。 2004年12月の自宅デスクTOP でも、それはほんの序の口でした。Windows95が発売されたころ購入したデスクトップコンピュータは、大きくて重く、騒音や発熱もあったので、 2004年(平成16年)に北海道に単身赴任した時には小型のデスクトップを買いました。価格は4分の1くらいになっていました。 ホテルや航空券の予約、通信販売、銀行振り込み、情報の検索、個人の情報発信、コミュニケーションツール、ビッグデータ処理、 人工知能、IoT、アドテクノロジー、フィンテック・・・など、今に至っても止まるところを知らず、次々に新しい動きが現実化しています。


 ここで、「インターネット商用化の歴史」を簡単にまとめてみました。
 1992年(平成 4年) 日本初のISP(インターネットサービスプロバイダー)や
               パソコン通信サービス事業者の誕生
 1993年(平成 5年) Webブラウザ誕生
 1994年(平成 6年) ダイヤルアップIP接続サービス
              検索エンジン(YAHOO!、Excite、Infoseek・・・)
 1997年(平成 9年) 検索エンジン(Google)
 2000年(平成12年) 検索サービスやネット通販やネットバンクが始まる
 2003年(平成13年) Skype会社設立
 2004年(平成16年) SNSが始まる
           【個人で利用実績のあるネットサービス】
           ・加入電話への通話(SkypeOUT)
           ・ネットバンクを利用した振込み
           ・YAHOO!路線情報      ・ビジネスホテルの予約
           ・航空券の予約・購入     ・旅行の手配
           ・オンラインでの音楽購入   ・宅配便の配達状況確認
           ・ハイブリッドメール       ・電報
 2005年(平成17年) 動画共有サイトYouTube
 2008年(平成20年) Twitter・Facebook
 2010年(平成22年) iPad発売
 2011年(平成23年) スマートフォンが急速に普及し始める
 2012年(平成24年) LINE


スマホの発表  1980年代後半から数えて、早いものであと少しで30年になりますが、私の周囲では、ソフト開発に対する認識は当時とあまり変わっていません。 しかしアメリカでは、オバマ前大統領が現役の頃、自ら全米の若者に向けて「こういったスキルを学ぶのは単に将来に役立つからというだけではありません。 我が国の将来に必要なのです。我が国が最先端をゆく国であり続けたいのであれば、私達の生活を変えてくれるような、ツールや技術を習得した、 あなたたちのような若い人が必要なのです。」とプログラミングの重要性を呼びかけています。日本では聞くことのできない重要な指摘です。 日本でも、オバマ前大統領のようなことが言える人、あるいは政治の責任者にこういうことを言わせる力を持った人が必要なのではないでしょうか。

 私は、「これまでICTとは無縁だったあらゆる分野にICTが浸透していく時代に、ICTを駆使してニーズに密着した開発のできる人が一人でも多くいれば、 あるいはこうしたことに理解を示す人が増えれば、日本を発展させる大きな力となるに違いない。」と思うのです。 こうしたことを実行するのは、健康・体力・意欲・思考の面で、若い人に越したことはありませんが、 今の時代は、60歳を越えてもまだ若く、遅くはないと思います。むしろ、組織人として「終わった人」のほうが、十分な時間やゆとりがあり、 豊富な業務経験や人生経験を活かして、自由な発想で取り組めるのではないかと思のです。 ソフト開発に対するコスト面でのハードルは、自分で実行できる範囲のことをしている限り極めて低いものです。 個人でも、昔とは比較にならないほど大きなことができます。 ただ、あまりにも多くの情報が溢れていて、わき道をせずに挫折することなく目標に向かっていくことが困難な時代でもあると思います。


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