蓄音機から音声ファイルへの進化

2017.04.11 岡田定晴
 古いレコード(作曲:Amacha)

 まだ幼い孫たちを見ていると、自分が幼少の頃に戻ったような懐かしい気持ちになります。 それと同時に、幼いころに関心を持ったものを思い出し、今の孫たちと比較してしまいます。

 今、私の孫たちが最も関心を持っているのは、iPadでゲームをすること、プラレールの新幹線で遊ぶこと、YouTubeで新幹線の映像を見ること、 新幹線の運転手の体験ができるテレビゲームをすること、本物の新幹線を眺めたり乗ったりすることなどです。

 私が幼いころの遊びは、空き地や舗装していない地面を使う遊び(缶蹴り※、ビー玉、チンパ、縄跳び、野球、雪合戦、雪だるま)、 頭を使う遊び(折り紙、お手玉、綾取り、双六、かるた、トランプ、将棋[はさみ将棋、泥棒将棋を含む])でした。また、 ゼンマイばね仕掛けの蓄音機、真空管式のラジオなどに興味を持ちました。テレビは近所の裕福な家庭にあり、見せて貰いに行っていました。

※) 缶蹴り: 鬼ごっこの一種。最初、参加者と鬼が缶を置いた定位置に集まり、誰かが缶を遠くへ蹴ります。鬼がその缶を拾いに行って、 定位置に缶を戻す迄のに間に、参加者が逃げて物陰に隠れます。鬼が、隠れている参加者を探しに行っている間に、参加者の誰かが、 定位置にある缶を蹴とばすと、鬼は缶を拾いに行き、定位置に戻してから参加者を探さなくてはならなりません。


 改めて、昔と今とでは、周囲にあるものや、生活環境が全く違っていることに気付きます。 この60年間の変化は、自動車の普及や都市化、社会環境の変化も大きかったと思いますが、 ICT(情報通信技術)の急速な進歩によるものも非常に大きかったと感じています。

蓄音機  ポータブル蓄音機というレコード盤の再生装置がありました。レバーをねじ穴に入れてくるくる廻すと、ゼンマイばねが巻かれてエネルギーが蓄えられます。 レコード盤をターンテーブルに載せて、針の足の付いた丸い大きなピックアップを静かに降ろし、レバーを押してターンテーブルを回転させると、 蓄音機内部に収納されたラッパから音が聞こえました。電気を全く使わずに、全てが機械仕掛けで成り立っていました。 ピックアップの針は、金属でできており、レコードを何回も再生するとすり減ってくるので、新しい針に交換する必要がありました。 その針の交換は、使っていた針をねじを緩めて抜き、そのあとに新しい針を入れてねじを締めて固定して行いました。 蓄音機のピックアップ

 回転しているターンテーブルに手を触れて、回転を遅くしたり速くしたりすると、音が低くなったり高くなったりして聞こえました。 高い音にすると笑えるほど面白く、低い音で回転が止まりそうにすると怖い感じがしました。それが面白くてたまりませんでした。 レコード盤は、童謡歌手の歌う「あの子は誰」「からすの赤ちゃん」「みかんの花咲く丘」など、数枚しかありませんでした。 現在からみると、ほんとうに旧い昭和の曲でした。レコード盤は、表面と裏面があり、どちらにも音が刻まれています。 一枚のレコード盤に2曲が収められていました。



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 小学4年生の時(昭37)、ゼンマイ式の蓄音機に油を注しました。何も知らないで「食用天ぷら油」を注したら、 ゼンマイばねや歯車にほこりが付着して油が硬くなり、蓄音機が動かなくなってしまいました。 それだけではなく、機械油と「食用天ぷら油」が混ざって、何とも言いようのない嫌な臭いがしました。 油まみれになったほこりを落として何とか動くようにならないかと蓄音機を分解するうちに、元に戻せなくなってしまいました。 つまり、分解して壊してしまいました。知らないということは怖いものです。 こうして蓄音機が動かなくなってしまったので、電気式のレコードプレーヤーを買ってもらいました。 蓄音機のずっしりとした重みが無くなって、軽くなってしまいました。

 その後、社会人になって(昭50)からは、ステレオ再生ができる立派なターンテーブルになりました。 それがCDになったのは、30代後半(昭和~平成のころ)のことです。 1984年(昭和59)頃、録音機能のないカセットテープ式のウォークマンに初めて接してその音質の良さに驚き、 その後、録音機能のある機種が発売されたときに購入しました。以降、MD、メモリースティック、CDなどを 記録媒体としたウォークマンが発売されました。2000年(平成12)頃には、フラッシュメモリを用いた mp3プレーヤーがありました。 私は、1998年(平成10)頃には、メモリースティックを使ったICレコーダーを使い、 2004年(平成16)頃に、音楽をネットからダウンロードして購入(当時流行した「冬のソナタ」関連) していました。ダウンロードする前に、音楽サンプルをストリーミングで聴くことが出来ました。 2007年(平成19)頃にYouTubeを知り、2012年(平成24)ころから活用するようになりました。 記録するメディアやフォーマットが短期間で交代していき、音楽を収集するということが落ちついて できないような環境でもありました。

 今、昔のレコード盤が人気のようです。CD、ストリーミング、ダウンロードにはない「手にした時の温かさや重さ」、 「ジャケットのインテリア性」、「音が刻まれているということが直感的によくわかり音質も良い」、といったところでしょうか。 不注意でつけるキズや針との摩耗によるレコード盤の劣化などによる経年変化が無い、小型で軽くて持ち運びや取扱に便利など、 デジタル化のメリットが強調され、それが消費者に認められ普及してきたCDも、それだけではもの足りなくなったということでしょうか。
 昔のものは懐かしく、良さもあるのですが、私はデジタル記録のメリットを十分に享受しようとしています。 昔買ったCDを、デジタルデータ(mp3)としてとり込み、クラウドを経由してiPadにダウンロードします。 こうすれば、どこに居ても時間があるときに自分のCDを聴けるようになります。 専用の再生機を必要とせず、タブレット(やスマホ)で聴けるので、大変便利です。 全てがインターネットで扱われるようになってしまえば必要のないことですが、昔の蓄積を今に生かそうとすると、 少し知識が必要になるのです。ICT(情報通信技術)発展の恩恵を充分に受けるには、それなりの勉強や経験が必要になります。 ICTに疎い妻は、自分自身ではこのような対応ができず人の力を借りる必要がありますが、それで良いと思っています。

 ICT(情報通信技術)の進歩は、わずか60年の間に、電気を全く使わない機械式の蓄音機から、 ストリーミングやダウンロードでデジタル音声(映像)データを聴く時代、 地球上のどこでもリアルタイムに音声(映像)をやりとりする時代に変えてしまいした。


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