CEATECで見える「現在、過去、未来」

2017.10.11 岡田定晴
 秋の森の動物たち(作曲:Amacha)

正面入り口より  10月3日(火)~6日(金)、 CEATEC JAPAN 2017 (Combined Exhibition of Advanced Technologies)が 幕張メッセで開かれました。テーマは、CPS/IoT Exhibition で昨年のCEATEC JAPAN 2016 から設定されています。CPS(Cyber Physical System)、IoT(Internet of Things) であらゆるものを情報化し、農業、医療、家などを巻き込んで一つにつなげる技術を実感できる場、 ビジネスイノベーションの種を見つける世界でも類を見ない展示会となっています。 「つながる社会」「情報社会からCPS/IoT社会へ」「データを収集し、解析結果をフィードバックする ことにより新たな価値や”経験値”を創造する社会」と謳われています。

 主催は、電子情報技術産業協会(JEITA)、情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)、 コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)で構成されるCEATEC JAPAN 実施協議会で、 後援、協賛団体、協賛学会、協力、グローバルパートナーには、各省庁をはじめ無数の組織が名を連ねます。 まさに、日本の国力を示すイベントであると感じます。会期4日間の登録来場者総数は152,066人(前年比4.7%増)、 1日あたりの登録来場者数平均は2008年以来9年ぶりに38,000人超と、CEATEC JAPAN 実施協議会から発表されています。

 CEATEC JAPAN は、2000年に「エレクトロニクスショー」と「COM JAPAN」の2つの展示会が統合されて 始動しましたが、私は東京の晴海の東京国際見本市会場で開かれていたエレクトロニクスショー(1964年~1999年) やデータショウ(1972年~1996年)の時代から、ほぼ毎年こうした大規模な展示会を見てきました。 特にこの10年間は、それ以前にも増して時間をかけて全体の状況を把握しようとしてきました。

 CEATECを見れば、日本の「現在、過去、未来」が見えてきます。展示会などのイベントは、 主催者や出展者の意図が反映されるものですが、膨大な出展の内容を見て全体を把握していくと、 過去から発展し或は衰退して変化しつつある「現在」と、新たなトレンドから「未来」が見えてきます。 今後の暮らしや社会の変化を想像することができます。あらゆる分野にICTが浸透していく今の時代に、 全体像を正確に把握しておくことは、分野を問わずビジネスにかかわるあらゆる人々に必要なことであると思われます。 残念なことに、組織の中で影響力の大きな人、決定権者に近い人ほど、忙しくて時間が無いため、 見逃してはならないと思うポイントだけを、部下たちと一緒に見て帰ってしまう傾向があるのではないでしょうか。 少なくとも3日は一人でじっくり質問しながら見たり、講演を聴いたりしなければ、全貌がわからないと思われます。



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 以下、CEATEC JAPAN 2017を見て訊いて、聴講して感じた「未来を示唆する現在」をメモに残しました。

【新しい試み】
CEATEC AWARD 2017  会場の正面入り口から真っ直ぐ進むと、毎年、「CEATEC AWARD」と「米国メディアパネル・イノベーションアワード」を 紹介する大きなパネルが見えます。しかし、今年はここに「米国メディアパネル・イノベーションアワード」の紹介が無く、 「LinkRay」と「CEATEC会場 リアルタイムヒートマップ」が紹介されていて、新たな意気込みを感じました。

・LinkRay
LinkRayスキャン履歴  ”光”を使った新しい情報配信サービスで、LinkRayのアプリをダウンロードし、 会場内のLinkRayスポットでスマホを光にかざすと情報が取得できます。 LinkRayのアプリを起動してCEATEC AWARD 2017 の各賞を紹介するパネルにかざすと、 それを紹介する情報が表示され、履歴が残るのであとからワンタッチで読みだすことも できました。



・CEATEC会場 リアルタイムヒートマップ
CEATEC会場 リアルタイムヒートマップ  「ジョルテ」というカレンダーのアプリをダウンロードし、これを活用して、会場内に取り付けられた 1000個のセンサーからの情報を得て会場のマップに混雑具合をグラフィカルに表示するものです。 今、会場のどのエリアが混雑しているか、視覚的に良くわかりました。

(参考1)CEATEC AWARD 2017
 CEATEC AWARD 2017は、CEATEC JAPAN 2017に展示される技術・製品・サービス等の中から、出展者が事前に応募した出展品について、 「CEATEC AWARD 2017 審査委員会」が学術的・技術的観点、将来性や市場性等の視点から、イノベーション性が高く優れていると評価できるものを審査・選考し、表彰するものです。

(参考2)米国メディアパネル・イノベーションアワード
 CEATEC JAPAN 2017に出展される製品・技術・サービスを、米国のIoT関係のジャーナリストで構成される選考委員会が審査し、 革新性に優れ今後の米国市場への影響力が高いと思われるものを選定し表彰します。結果発表・受賞式はCEATEC JAPAN 2017開催期間中に行われ、その模様は全世界にニュース配信されます。

【顔認証を活用した決済サービス】
 事前に登録した顔画像と、POS端末の近くのカメラの顔画像と照合して本人確認を行い キャッシュレス、カードレスの手ぶら決済を可能にするものです。レジなどでの待ち行列を解消でき、 財布を持つ必要は無くカード紛失のリスクもありません。

【リアルタイム顔認証】
 多人数の同時認証を高速でリアルタイムに実現しています。重要施設のセキュリティ強化やVIP・会員の顧客管理に。

【IDカード型ハンズフリー音声翻訳端末】
 名刺サイズの端末を首から下げて使うことのできる、音声認識・翻訳装置。医療分野での実証実験が紹介されていました。

【エレベーター行先予報システム】
 エレベーターの待ち時間と乗車時間を最小限にする仕組みです。 エレベーターホール入口に設置したセキュリティゲートと連動していてエレベーターのボタン操作は要りません。 乗車前に行先階を登録するのでエレベータを効率よく配車でき、同一目的階利用者をまとめるので各階停止を減らして運行効率が向上します。

【生活支援ロボット】
 幼児向けソーシャルロボット(転がって移動し子供の傍に、会話や遊びを通じて自発的な成長を引き出します。 教育機関・事業者の知見をもとに子供の成長をサポートします。)

【音声によるコンピュータインターフェース ヒアラブル】
 人の活動を妨げることなく、人とモノやAIをつなげるインターフェースです。 耳にデバイスを装着することでユーザーの情報を捉え、発話によって情報を伝える新たなインターフェースです。

【IoT関連】
会場 ・ウェアラブル向け小型2次電池(超小型ピン形電池、繰り返しの曲げやねじりに耐えるフレキシブル電池)
・WEARABLE MAKER PATCH(衣服や布製品に縫い付けるだけで簡単にウェアラブル・デバイスの機能を付加できるしなやかなパッチデバイスで、 搭載する電子部品は、脈拍・温度・LED・ブザー・タッチ・加速度・水分・紫外線などのセンサーやLED、ブザーなど)

【空間認知システム】
 Wi-Fiの電波をセンサーとして利用し、屋内の環境をリアルタイムに検知するものです。 屋内環境の変化により電波の反射が変化すると受信マルチパスのパターンも変化し、 ドアの開閉や人・モノの動きや呼吸時の胸の動きなどが高精度に検知できます。 機械学習により検知精度を向上させたり、複数の変化を同時に検知することが可能です。 毎秒50回、1~2cmの精度で屋内環境変化を検知学習できます。 Wi-Fi電波の届く範囲でセンシングでき、特殊なデバイスは要りません。

【5G】
 超高速、大容量、超多接続、高信頼、超低遅延が要求される用途の応用が期待できます。 無人ショベルカー(リモコン)、高度警備サービス(カメラ・スマホ・入退出ゲート・ ドローン・警備ロボットなどからの情報をセンターに送り、そこで情報解析された結果を受信する)など。

【新素材[CASIOデジタルシート]開発とプリントシステム】
 素材開発、デザイン開発、触感開発に使用する材料を、電磁波造型技術でつくるものです。 圧倒的な時間短縮とコスト削減を実現しています。

【カロリー/栄養素チェッカー】
 料理のカロリーや三大栄養素の含有量を短時間に非接触で計測する装置です。 食事のログデータを活用したアプリ/サービスが検討されています。

【スマート水素ステーション】
会場  再生可能エネルギー(太陽光・風力・水力・バイオ発電)などの電気で水を電気分解して 燃料電池自動車に供給する高圧水素を製造するもので、コンプレッサーを使用することなく、 水素の製造・貯蔵・充てん装置をコンパクトにまとめています。

【双方向ワイヤレス電力伝送機能】
 電力系統から電気自動車への充電、電気自動車から電力系統への放電を、非接触で可能にするものです。

【フィンテック関連】
会場  デジタル通貨・ブロックチェーン・顔認証決済など





 展示とは別棟、国際会議場コンベンションホールや国際会議場会議室では、AIやFintech、セキュリティやIoT最新動向など100を超える講演が 行われました。世界で活躍している企業のエグゼクティブや、第一線で活躍する研究者や起業家の話は、とても価値あるものです。

 「”日本流”大企業から新規事業を創出する極意」というセッションでは、日本では優秀な人はどうしても 大企業に集まるので、大企業にいる安定を担保したまま人材を活かしていくという手法が紹介されていました。 その中のディスカッションで、「バブル後は、リストラ上手が経営者になり新規事業を開発した経営者が少ない、 リストラは短期間に成果を出して評価されやすい、新規事業は時間がかかり次の世代が評価されるので割に合わない、 大企業では経営陣の任期の関係で新規事業の結果が出るまでやるのは難しい、 ベンチャーで新規事業が成功するのは大企業と違い成功するまで続けるから・・・」という議論に、 その通りであると共感しました。

 また、IoTタウン特別コンファレンス「IoTにより変革する金融業界の未来~中央銀行・メガバンクが描く金融ビジネスの未来と IT・エレクトロニクス産業への期待とは~」では、 中国では「日常生活で現金を見ることがない」「スマホのアプリで何でもできる」という状況になっているようで ICT(情報通信技術)が生活に浸透して便利になるという流れの中で、ここ数年で急速に金融も組み込まれていった という事実や、日本の銀行も金融業界での先端技術活用のため様々な取り組みをしていることがわかり、 今後、われわれの生活が大きく変わっていくことになるかもしれないと感じました。

会場  まさに、CPS/IoT Exhibition(あらゆるものを情報化し、農業、医療、家などを巻き込んで一つにつなげる技術を実感できる場、 ビジネスイノベーションの種を見つける世界でも類を見ない展示会)を感じるものでした。


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