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第六十四段ICT(情報通信技術)発展の裏側   ~その2~

 でも、ここまできたプロジェクトも、そのまま順調に成長していくことは難しいものです。何故でしょうか。

 その理由の第1は、ICTの新しい技術がこれまで不可能であったことを可能にするがために、「既存の秩序を壊す」からです。最新の技術を採り入れて成果を出そうとする「顧客の側」は歓迎しますが、従来の手法で開発の仕事をする人たちは強力なライバルが現れたと感じて摩擦が起きるからです。これを乗り切るには、それに対する心構えやエネルギーが必要になります。でも、これを器用にかわして泳ぎ回ることができる人は多くはありません。

 第2は、どんどん進歩していく新しい技術の流れに適応しなくてはならない一方で、目の前のお客様のニーズに応えなければならないという必要に迫られます。どちらかといえば、目の前のニーズに応えることを優先せざるを得なくなります。そして、新しい技術への挑戦は後回しになります。これを避けるには、一つのグループで全てに対応するのではなく、新しい技術に挑戦していくグループと、安定的な収益を目指すグループの2つに分けることです。でも現実には、このような対応は、よほどゆとりのある組織でなければできないでしょう。

 第3に、アウトソーシングの問題があります。内製化は原価を削減して技術やノウハウを蓄積することができます。技術の育成には、内製化が必須です。しかし、外部に発注するアウトソーシングに比べ、手間がかかるので、内製ばかりでは業務が逼迫することになります。効率が悪いという理由から、外部の力を借りることを当然のこととする人もいますが、技術やノウハウの蓄積のため内製化が必要であるという認識がなければ、業績向上があったとしても一時的なものです。技術やノウハウの蓄積のために(=成長のために)内製化をするという発想のできる人も少ないのです。誰も、目の前のことのみを考え将来を考えるゆとりが無いのと、開発の経験がなければその重要性が理解できないのです。

 このことをもう少し考えてみます。アウトソーシングしても構わない仕事か、内製化をなしなくてはならない仕事かを長期的な視野で判断しなければなりません。外部に頼っていては、お金も技術も外部へ出てしまい、内部には何も残りません。「技術が外部に出る」というのは、持っている技術が流出するという意味ではありません。開発の試行錯誤の過程で、様々な技術やノウハウが身に付くものです。アウトソーシングすればその技術やノウハウは、外部の人材に蓄積されていくのです。開発を依頼する側には技術やお金は残らないのです。外部の力を借りることによって、一時的に多くの仕事を効率よく処理したり、利益を上げることはできるかもしれません。しかし、外部に頼った結果、技術を失くしてしまえば、依頼する作業内容の価値がわからなくなります。その依頼に対して、コストがどれくらいかかるかということも評価できなくなります。内部で行えば短時間で処理できることも、手間暇かけてお金を渡して人に頼むことになります。多くの技術が身についていることで可能となる革新的なアイデアが思い浮かばなくなります。アイデアが浮かんでも自分の手で試してみることもできません。

 これらの様々な問題は、ブログの最初に前提とした「大きな組織の中で、実績のあまり無い新技術を使って、新たなサービスを生み出そうというプロジェクト・・・」ということにより発生するものです。だから、何のしがらみもない、新技術が経営の根幹であるベンチャーのほうが大きく成長する可能性があるのでしょう。ベンチャーには、また違う課題があるのでしょうが・・・。この半世紀以上にわたる情報通信革命のなかで、時代の流れに適応できた企業とそうでない企業の栄枯盛衰も理解できるような気がします。

 毎日の生活の中で、ICT(情報通信技術)のお世話にならない日はありません。それが、しみじみとありがたいものであると感じるのか、なんでこんな面倒なことをしなくてはならないのかと思うのか、どうしてここまで自分のことが把握されなくてはならないのかと怒るのか・・・、感じ方は様々ですが、情報通信技術が大きく発展し、私たちの日常生活に深く入り込んできました。その背後に、多くの人々がこのような大変な苦労をしているのだ、その中から日の目を見たものに接しているのだということを知っていても良いと思うのです。毎日、ICT(情報通信技術)のお世話になり、大きな恩恵を受けているのですから。

岡田定晴: (おかださだはる 1952年生)名古屋市出身。平成28年10月にHTML5・CSS3・Javascriptなどのオープンソースで独自構築したウェブサイトをスタートしました。ブログ「平成の徒然草-ICT版」は、情報通信技術の発展と活用によって変わっていく世の中を、この六十数年の間、自ら体験したことや感じたことを随筆で描くものです。