朗読者からのコメント 「恩讐の彼方に 一」





 小学校の高学年の時に、担任の先生から『青の洞門』を話を聞いた時、『恩讐の彼方に』という本の題名も、 聞いた覚えがあります。『恩讐の彼方に』は、とても良い話だとは聞いていましたが、 その後ずっと、読む機会はありませんでした。二年ほど前に、朗読のテーマを探していた時に、この 本と出合いました。確かに、主人公の犯した過ちと、最後の結末に至る行動は、感動に値する と思いました。

 朗読したいと思いつつも、今では使わなくなってしまった言葉や、時代小説という経験したことのないテーマ、 内容が自分の読み方には馴染まないのではないかという心配などから、朗読に至るまでに随分と時間を要しました。



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 浅草田原町の旗本、中川三郎兵衛に仕える若武士、市九郎は、三郎兵衛の妾との非道の恋を したという不義を言い立てられて切りつけられます。市九郎には、主人に反抗する気持ちはありませんでしたが 一旦血を見ると、主人だと思っていた男が、自分の生命を脅そうとしている凶悪な動物に見え、 攻撃に転じます。主人の太刀が、鴨居に切り込まれ太刀を抜こうとするとき、市九郎は主人の脇腹を 薙いだ。主殺しの大罪を犯した市九郎が自殺の覚悟を固めていた時、妾のお弓が、仲間たちが気付いて いないうちに有り金をさらって一緒に逃げることを勧めました。安永三年の秋の初め、 三歳になる三郎兵衛の一子実之助が父の死も知らず、乳母の懐に眠っていました。

 最初から最後まで読むと、一時間半程度かかります。聴きやすい長さに分けて読んでいきます。 今回は小説の冒頭、これから展開していく話の始まりとなる出来事を、わかりやすく描写することを 心がけて読みました。
(7分58秒)


岡田定晴


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